仏師の家に生まれ、父の仕事を見て育ちました。
木の香り、木を削る音。木の中から生まれては旅立っていく仏さま。
家のあちこちに、父が彫った仏像や、いろいろなものがありました。
ハンコや耳かき、おもちゃ箱にはうさぎや木魚。
私にとっての当たり前が、どれほど贅沢なことだったか知ったのは、
ずっとずっと後になってからのことです。
父と同じ道を歩みながら、仏さま以外のものを彫るようになったのは、
幼い頃の体験が大きいような気がします。
ふと顔を上げれば、仏さまやネコと目があったり、
胸元のアクセサリーを、指でそっとなぞっていたり・・
つかず離れずでいつも傍に木がいてくれる、そんな日常を知っていただきたくて。
木と人とをつなぐお手伝いが出来れば嬉しく思います。